お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
昔から、夫の書斎にある図鑑を見ているのが好きな子だった。
こうやって行動を制限させている現状は、クリスのためにはならないとオードリーは考えている。
けれど、どちらに向かえばいいのか。
義父母の言うとおりにウィストン伯爵と結婚すれば、経済的には自由になるだろう。夫の友人だから、子供のことも大事にしてくれると思う。

けれどオードリーはレイモンドがいい。
今度こそ選択を間違えたくないのだ。
どうやったら監視から逃れて、クリスを連れてこの家を出れるか、考えてはみるがいい方法が思いつかない。

やがて約束の時間となる。


「クリス、失礼があってはいけないから、おばあちゃんと居ましょうね」

「でも。クリスも王子様に会ってみたい」

「駄目よ。ほら、奥の部屋で遊びましょう」

「……すみません、お義母様」


追い立てられるクリスは、時折オードリーの方を振り返る。
ごめんね、と思いつつ、今は義母に任せることにした。


「奥様、そろそろお時間です」

「分かりました。失礼のないようにお迎えしないとね」


当主としてまず義父があいさつし、その後、内容の説明要員としてオードリーが対応することになっている。
オードリーは身だしなみを整え、玄関ホールに向かった。すでに義父が待っていて、オードリーに後ろに控えるように言う。
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