お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
「レイモンドに会いたいわ」
「もう少し我慢してくれ。残念ながらレイモンドは門番に顔が知られすぎていて、今回連れてくるわけにいかなかったんだ。その代わり、手紙を預かっている。良ければ、走り書きでいいから返事を書いてやってくれないか」
「もちろんです」
目尻に浮かんだ涙を拭いながら、オードリーは頷いた。
そしてケネスが持参した手紙を便箋を受け取り、一瞥すると勢いよく返事を書き始めた。
その間、ザックはディラン先生と鉱物図鑑を見てうんうん唸っている。
「こんな感じで銀色の鉱物が石と混じっていました。銀とはまた違うように思えて気になっていたんですが」
「そうじゃな。基本、造幣局で扱う金属は扱いやすいものが主じゃ。鑑定を頼まれたにしてもそんなに取っておくかのうという気はするが。銀色に輝いていたというなら、このあたりが怪しいだろうな」
ディラン教授が示したのは輝安鉱という鉱物だった。
中央からまるでハリネズミが棘を出すように、銀色の突起物がいっぱい出ている。
「似ている気がします」
「わしは鉱物が専門というわけではないが、銀は自然銀という形で見つかることはほとんどない。輝銀鉱などの銀鉱物を精錬することで輝きのある純度の高い銀を取り出すはずなんじゃ。アイザック様が見たというその鉱物が、銀であることはまずないと思う」
「なるほど……アレ?」
パラパラとその近くに合った書物を眺めていると、一枚の紙がはらりと落ちてきた。