お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
そう思ったロザリーは覚悟を決めた。
「……私、お手洗いを借りてきていいですか?」
「え?」
「少し迷うかもしれないですけど、心配しないでください。私にはこの鼻がありますので」
暗に、クリスと会ってくる、といい、ロザリーは書庫を飛び出した。
廊下には誰もいなかった。
が、子爵家には使用人もそれなりにいるので、うっかり歩き回っていると見つかってしまう。
(まずはクリスさんのにおい。……それからいくつかあるにおいを覚えよう)
廊下の中央に残るのが、おそらくは主人である子爵夫妻やクリスの香りだ。使用人は彼らが通るたびに脇に身を寄せるので、においが壁についていることが多い。
こうして嗅いでみると、クリスは家の中では元気に動き回っていそうだ。そこかしこに彼女の残り香を見つけ、ロザリーは思わず笑ってしまう。
「今日は王子様が来てるんですって」
使用人のものらしい声が聞こえて、ロザリーは思わず壁際により、身を隠した。
「でも失礼になるから私たちは出るなって、奥様が。こんな機会二度とないのに。見るだけならいいと思わない?」
「若奥様はお相手してるんでしょ? 良いなー」
どうやら、メイドがふたり、暇を持て余しているらしい。
普段なら掃除なり洗濯なりをしているのだろうけれど、うるさくなるから止められているのだろう。
別の方向に逃げようかとも思ったがカイラの助言を思い出し、ロザリーはしばらく彼女たちの話に耳を傾けた。
メイドの噂話は留まるところを知らない。
「……私、お手洗いを借りてきていいですか?」
「え?」
「少し迷うかもしれないですけど、心配しないでください。私にはこの鼻がありますので」
暗に、クリスと会ってくる、といい、ロザリーは書庫を飛び出した。
廊下には誰もいなかった。
が、子爵家には使用人もそれなりにいるので、うっかり歩き回っていると見つかってしまう。
(まずはクリスさんのにおい。……それからいくつかあるにおいを覚えよう)
廊下の中央に残るのが、おそらくは主人である子爵夫妻やクリスの香りだ。使用人は彼らが通るたびに脇に身を寄せるので、においが壁についていることが多い。
こうして嗅いでみると、クリスは家の中では元気に動き回っていそうだ。そこかしこに彼女の残り香を見つけ、ロザリーは思わず笑ってしまう。
「今日は王子様が来てるんですって」
使用人のものらしい声が聞こえて、ロザリーは思わず壁際により、身を隠した。
「でも失礼になるから私たちは出るなって、奥様が。こんな機会二度とないのに。見るだけならいいと思わない?」
「若奥様はお相手してるんでしょ? 良いなー」
どうやら、メイドがふたり、暇を持て余しているらしい。
普段なら掃除なり洗濯なりをしているのだろうけれど、うるさくなるから止められているのだろう。
別の方向に逃げようかとも思ったがカイラの助言を思い出し、ロザリーはしばらく彼女たちの話に耳を傾けた。
メイドの噂話は留まるところを知らない。