お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。


そのままザックは執務室へと戻る。部屋にいるのは相変わらずケネスだけで、テーブルにはまだ湯気の上がったお茶と菓子がある。

「お帰り、ザック。いいタイミングだね。お茶を持ってきてもらったところだ。休憩しよう」

「準備が良いな」

「実は今日は朝からレイモンドにシフォンケーキを焼いてもらっていてね。今切り分けてきてもらったんだ」

ケネスはレイモンドの料理を非常に気に入っている。
どうせオードリーの手紙を受け渡した礼に、とでも自分で頼んだのだろう。
頼りになる兄貴分で世話好きで、どこまでも人のために尽くしていそうだが、ケネスは自分にとっての利は見失わない。そういうところはむしろただ人がいいだけの人間よりも信用できる。

兄との話で緊張したせいか、喉は非常に乾いている。ありがたく、菓子と香りのいいお茶をいただいた。
シフォンケーキはやらわかく、噛むと小さな弾力を残し、やがて溶けていく。

甘いものは癒しだ。
菓子を食べているとなぜかザックはロザリーを思い出す。

「さて。何かわかったかい?」

< 166 / 249 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop