お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
*
内庭に残る匂いが気になったロザリーは、意を決して、数日徹夜をすることにした。
ウィンズだって、自分たちの起きている時間に庭の手入れはほぼ行っていない。もちろん、作業の手際の良さを見れば彼が作業していないことはないのだろうが、だったらなぜ、自分たちの知らない時間にやるのか、どうしても気になるのだ。
カイラに夢遊病の症状が現れたのは一昨日。
昨晩も徹夜していたが誰も現れず、昼間に少し昼寝をさせてもらい、今日は二日目の徹夜だ。
普段、夜の十時にはぐっすりなロザリーにはなかなかにつらい。
(ベッドにはいったら絶対寝ちゃうし)
窓際に椅子を寄せ、体をもたせかけるようにして毛布をかぶる。これなら、仮に寝てしまったとしても深寝にはならず、物音で目が開くだろう。
夜が深まり、月の光が屋敷を照らす。柔らかな月の光に、ロザリーはなぜか、ザックのことを思い出した。
最初に出会ったときが、嘘の肩書だったからだろうか。本当は自ら光ることもできるのに、敢えて黙して光らないように努めているようにさえ思えるのだ。
だけど王家という生まれた立場は、嫌でも光を彼に当てる。ただそれを照り返すだけの月のままで彼がいるのかどうかは、本人にしか分からない。
(……ザック様が幸せそうなら、なんでもいいですけど……)
そんな風に考え事をしているうちに、ロザリーは窓の桟に寄りかかり、眠りに落ちていった。
内庭に残る匂いが気になったロザリーは、意を決して、数日徹夜をすることにした。
ウィンズだって、自分たちの起きている時間に庭の手入れはほぼ行っていない。もちろん、作業の手際の良さを見れば彼が作業していないことはないのだろうが、だったらなぜ、自分たちの知らない時間にやるのか、どうしても気になるのだ。
カイラに夢遊病の症状が現れたのは一昨日。
昨晩も徹夜していたが誰も現れず、昼間に少し昼寝をさせてもらい、今日は二日目の徹夜だ。
普段、夜の十時にはぐっすりなロザリーにはなかなかにつらい。
(ベッドにはいったら絶対寝ちゃうし)
窓際に椅子を寄せ、体をもたせかけるようにして毛布をかぶる。これなら、仮に寝てしまったとしても深寝にはならず、物音で目が開くだろう。
夜が深まり、月の光が屋敷を照らす。柔らかな月の光に、ロザリーはなぜか、ザックのことを思い出した。
最初に出会ったときが、嘘の肩書だったからだろうか。本当は自ら光ることもできるのに、敢えて黙して光らないように努めているようにさえ思えるのだ。
だけど王家という生まれた立場は、嫌でも光を彼に当てる。ただそれを照り返すだけの月のままで彼がいるのかどうかは、本人にしか分からない。
(……ザック様が幸せそうなら、なんでもいいですけど……)
そんな風に考え事をしているうちに、ロザリーは窓の桟に寄りかかり、眠りに落ちていった。