お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。

「俺は君を、いつか妻に迎えたいと思っている」

キスだけでも動転しているというのに、その熱いまなざしを向けられて、ロザリーはアワアワするばかりだ。

「でも、ザック様」

好きだと言ってくれた。ロザリーももちろんそれは嬉しい。
ただ、ザックは王子様だ。彼は気にしないと言ってくれても、辺境の男爵令嬢を妻にすると言っても誰も賛成などしてくれないだろう。

「分かってるよ。君はまだ十六だ。結婚なんて考えてもいないだろう。それはそれでいい。俺は待つ気もある。だけど、……俺がいない間にほかの男にかっさらわれるのはごめんだ」

だから約束が欲しいのだと、彼は言う。
どうやらザックが心配しているのは、ロザリーの心配とは別のことのようだ。

どうしてロザリーが頷かないなんて思えるのだろう。ザックのような魅力たっぷりの人から恋情をぶつけられて、いやな人間などいるわけがないのに。
ロザリーは、思わずくすっと笑ってしまった。ザックの心配なんてただの杞憂だと分かってもらうために。
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