お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
ザックが三才で王城に呼び戻されてから、しばらく父王は母親のもとに通い続けていた。
子どもの目にも、ふたりは仲良く見えたし、それまで母親とともにイートン伯爵家に追いやられていたザックとしては、急に母親が奪われた気がして面白くなかった。
それゆえに、父親には反発し続けていたように思う。
どうせ王位を継ぐのは第一王子で、ザックはただの保険だ。
やがて、第一夫人の嫌がらせが酷くなると、いくら父親が庇おうとしても、侍女たちはカイラに冷たく当たった。
心を壊していく母を間近で見ながら、ザックは第一夫人や父親を恨む以外に道がなかったのである。
「知られれば……批判を受けるのは父上だけじゃない、母上もか」
そして、自分のせいだと思ったからこそ、距離を置いたというのならば。
「はっ……父上は馬鹿な人なんだな、案外。……大馬鹿だ」
「ザック様、それ他の人の前で言ったら不敬と言われてしまいますよ」
ロザリーは思わず笑ってしまう。ザックもつられて笑って、ふたりの間には和やかな空気が流れた。
やがて食事を終え、ロザリーがこっそりと食器を返してきてくれる。
戻って来たときには、なぜかロザリーはカイラの侍女であるライザを連れてきていた。
「どうしたライザ」
「カイラ様に内緒でザック様を呼び込んだうえ、お嬢様とふたりきりで過ごさせたと知れたら、のちに私が怒られますもの。陛下が来られるまで、私もご一緒させていたします」
「……って言われたもので」
ロザリーも少しばかり困った様子だ。
「ではアイザック様は窓の陰に映らないようこちらの椅子におかけくださいませ。ロザリーお嬢様、こちらで私と一緒に陛下の到着を確認しましょう」
こうして、ザックの淡い期待はライザに一蹴されたのである。
子どもの目にも、ふたりは仲良く見えたし、それまで母親とともにイートン伯爵家に追いやられていたザックとしては、急に母親が奪われた気がして面白くなかった。
それゆえに、父親には反発し続けていたように思う。
どうせ王位を継ぐのは第一王子で、ザックはただの保険だ。
やがて、第一夫人の嫌がらせが酷くなると、いくら父親が庇おうとしても、侍女たちはカイラに冷たく当たった。
心を壊していく母を間近で見ながら、ザックは第一夫人や父親を恨む以外に道がなかったのである。
「知られれば……批判を受けるのは父上だけじゃない、母上もか」
そして、自分のせいだと思ったからこそ、距離を置いたというのならば。
「はっ……父上は馬鹿な人なんだな、案外。……大馬鹿だ」
「ザック様、それ他の人の前で言ったら不敬と言われてしまいますよ」
ロザリーは思わず笑ってしまう。ザックもつられて笑って、ふたりの間には和やかな空気が流れた。
やがて食事を終え、ロザリーがこっそりと食器を返してきてくれる。
戻って来たときには、なぜかロザリーはカイラの侍女であるライザを連れてきていた。
「どうしたライザ」
「カイラ様に内緒でザック様を呼び込んだうえ、お嬢様とふたりきりで過ごさせたと知れたら、のちに私が怒られますもの。陛下が来られるまで、私もご一緒させていたします」
「……って言われたもので」
ロザリーも少しばかり困った様子だ。
「ではアイザック様は窓の陰に映らないようこちらの椅子におかけくださいませ。ロザリーお嬢様、こちらで私と一緒に陛下の到着を確認しましょう」
こうして、ザックの淡い期待はライザに一蹴されたのである。