お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
*
ナサニエルは階段をのぼりながら、彼女との出会いを思い出していた。
カイラに目を奪われたのはいつだったか。
政務に慣れ、自分の意思を掲げて政治に臨もうとして、アンスバッハ侯爵に阻まれていたそんなころだったように思う。
ふいに花のにおいが気になって、顔を上げると、侍女が花瓶の花を入れ替えていた。
「いい香りだな」
そう、声をかけてしまったのは、その花の香りで頭がすっきりと冴えるような気がしたからだ。
侍女はすっと頭を下げると、小さな声で告げた。
「気分を落ち着かせてくれる香りだと言われております。これで陛下のお気が慰められるとよいのですが」
王として、ナサニエルは様々な人間の敬意と向き合ってきた。けれど、こう言った気遣いを受けたことはなかったように思う。
何日たっても、その花瓶の花が気になり、花が変えられていたときにはなぜか残念な気がした。
ある日、再びその侍女が花を代えるところに出くわしたときは、胸が躍るのを止められなかった。
「この香りを、例えば服に焚きしめることはできるのか?」
突然話しかけられ、彼女は驚いた後に彼を見つめた後、慌てて後ずさって頭を下げた。
「せ、精油を取ればできます。私の両親は交易商ですので、そういった商品は扱っていますが」
「ではそれを用意するように。名前は?」
「……カイラです」
「メイド長に行っておく。明日から私の衣裳係に回すと」
強引な人事を半ば強硬的に推し進めた。カイラは当初戸惑っていたが、慣れてからはいろいろな香りの香木や精油を入手して、ナサニエルの心を慰めた。
ナサニエルは階段をのぼりながら、彼女との出会いを思い出していた。
カイラに目を奪われたのはいつだったか。
政務に慣れ、自分の意思を掲げて政治に臨もうとして、アンスバッハ侯爵に阻まれていたそんなころだったように思う。
ふいに花のにおいが気になって、顔を上げると、侍女が花瓶の花を入れ替えていた。
「いい香りだな」
そう、声をかけてしまったのは、その花の香りで頭がすっきりと冴えるような気がしたからだ。
侍女はすっと頭を下げると、小さな声で告げた。
「気分を落ち着かせてくれる香りだと言われております。これで陛下のお気が慰められるとよいのですが」
王として、ナサニエルは様々な人間の敬意と向き合ってきた。けれど、こう言った気遣いを受けたことはなかったように思う。
何日たっても、その花瓶の花が気になり、花が変えられていたときにはなぜか残念な気がした。
ある日、再びその侍女が花を代えるところに出くわしたときは、胸が躍るのを止められなかった。
「この香りを、例えば服に焚きしめることはできるのか?」
突然話しかけられ、彼女は驚いた後に彼を見つめた後、慌てて後ずさって頭を下げた。
「せ、精油を取ればできます。私の両親は交易商ですので、そういった商品は扱っていますが」
「ではそれを用意するように。名前は?」
「……カイラです」
「メイド長に行っておく。明日から私の衣裳係に回すと」
強引な人事を半ば強硬的に推し進めた。カイラは当初戸惑っていたが、慣れてからはいろいろな香りの香木や精油を入手して、ナサニエルの心を慰めた。