お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
カイラは何か話しているように口を動かしているが、声は聞こえなかった。
そして、彼に触れると、指先で腰のあたりを撫でた。
何をされているのか分からない。けれど、ロザリーが言っていた「陛下のお仕度をしている」という言葉で思いついた。
普段、自分は座った状態で髪を梳いてもらっていた。
ナサニエルが近くにあった椅子に座ると、今度は正しく髪の毛を指で梳き始めた。
かつては櫛でやってもらったものだが、これはこれで心地いい。これまで外にいて冷え切っていた彼の頭にもじわじわ熱がこもってくる。
そこで、ふいにはっきりとした声が聞こえてきた。
「……二エル様?」
「え?」
「本当の、ナサニエル様?」
彼が振り向いたとき、カイラの瞳の焦点は合っていて、しっかりと彼を映していた。
「カイラ」
「どうしてここにいらっしゃるの? それに……私、なにをしていたのかしら。まあ、アイザックまで。どうして、今はいったい何時?」
「正気に戻ったのか?」
ナサニエルが、カイラの腕を掴む。
懐かしい感触に、彼の衝動が止まらなくなる。
気が付けば、彼女の体を思い切り抱きしめていた。
「……すまない」
「いえ……でも本当に夢ではないんですね? どうなさったのです。国王様ともあろうかたが……」
「お前の香りが恋しかった」
彼女への好意を表に出すことは、彼女を不幸にすることだとずっと我慢していた。
だけど、カイラが夢の中でまでしていることを知って、ナサニエルの心の中にあった堰は壊れてしまった。
そして、彼に触れると、指先で腰のあたりを撫でた。
何をされているのか分からない。けれど、ロザリーが言っていた「陛下のお仕度をしている」という言葉で思いついた。
普段、自分は座った状態で髪を梳いてもらっていた。
ナサニエルが近くにあった椅子に座ると、今度は正しく髪の毛を指で梳き始めた。
かつては櫛でやってもらったものだが、これはこれで心地いい。これまで外にいて冷え切っていた彼の頭にもじわじわ熱がこもってくる。
そこで、ふいにはっきりとした声が聞こえてきた。
「……二エル様?」
「え?」
「本当の、ナサニエル様?」
彼が振り向いたとき、カイラの瞳の焦点は合っていて、しっかりと彼を映していた。
「カイラ」
「どうしてここにいらっしゃるの? それに……私、なにをしていたのかしら。まあ、アイザックまで。どうして、今はいったい何時?」
「正気に戻ったのか?」
ナサニエルが、カイラの腕を掴む。
懐かしい感触に、彼の衝動が止まらなくなる。
気が付けば、彼女の体を思い切り抱きしめていた。
「……すまない」
「いえ……でも本当に夢ではないんですね? どうなさったのです。国王様ともあろうかたが……」
「お前の香りが恋しかった」
彼女への好意を表に出すことは、彼女を不幸にすることだとずっと我慢していた。
だけど、カイラが夢の中でまでしていることを知って、ナサニエルの心の中にあった堰は壊れてしまった。