お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
「申し訳ないです。落ち着いたら聞きに来ますね」
ロザリーがふたりに声をかけると、ふたりは顔を見合わせ、「もしかして君が?」と不審そうに問いかける。
「はい!」
子どもみたいな身長に、あどけない笑顔。これが噂に聞いた失せもの捜しの令嬢……?と、ふたりは不安になりながら彼女が注文を聞いたり運んだりしているのを見ていた。
やがて、チェルシーが食堂担当として加わり、ロザリーを上回る素早い動きで注文を片付けていく。
食堂の処理速度が一気に上がり、ピーク時間を過ぎたこともあって、あっという間に溜まっていた洗い物も片付いた。
手の空いたロザリーは、待たせていたふたりのもとへ向かう。
「すみません。お待たせしました。私、ロザリーと言います。探し物はなんですか?」
ふたりは一度顔を見合わせ、茶髪のほうが口を開く。
「探しているのは人なんだ。いい身なりをしていて、黒髪の二十二歳の男性だ。身長は百九十センチ前後、ぱっと人目を引くような整った顔をしているが、身を隠すのがうまい。瞳は緑色だな。名前はおそらく偽名を使っていると思うんだが」
「それって……」
聞いている間から、ロザリーはサーっと青ざめる。
匂いを嗅ぐまでもなく、外見の条件だけで、探し人はザックでビンゴだ。