お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
バイロンが解放された瞬間、母親である第一王妃は支援するターゲットを第三王子コンラッドに替えた。今やバイロンに期待されているのは、アイザックを共に堕とすということだけだ。
「私が毒を仕込んだと言いふらせばいい。私は使い捨ての駒だからね。母上は君が少しでも王位への欲を出した途端に、全力で阻止してくるはずだ。……お前、頻繁に手紙を書いているそうだね。出しているところは見ないそうだが、どうせイートン伯爵のところの坊ちゃんが絡んでいるんだろう? クロエ嬢との縁談が破談になったのは、実はカモフラージュなんじゃないのかい? 母上は、お前の相手はクロエ嬢かもしくは伯爵領でできた女じゃないかと勘繰っている」
ロザリーへの手紙のことか、とザックは息を飲む。
この言いぶりだと、まだロザリーを特定できてはいなさそうだが。
バイロンは口の端を少しばかり上げた。
「図星かな。お前は素直でいけないね。……母上を甘く見ない方がいい。君の母上と君への憎しみは尋常じゃない」
「兄上」
「最後の助言だよ。私は使い捨ての駒だ。どうなってももう構わない。どうせ、……生きれても一年がせいぜいだ」
全てをあきらめたような兄の姿に、ザックはショックを受けた。