お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。
そして再会
ロザリーが令嬢教育に励んでいる間、レイモンドは何度もオルコット子爵家を訪れた。
が、結果はいつも同じ。「料理人ごときにオードリーを任せるわけにはいかない」と門前払いを食らっていた。
イートン伯爵の名を出せば、もしかしたら話くらいは聞いてもらえるかもしれない。が、レイモンドはそこまで図々しくもなれずにいた。
イートン伯爵領は、穏やかで伯爵の気質もあってそこまで身分差が気にならない。けれど、王都はやはり違うのだ。勝手にイートン伯爵の名を出すなど、使用人のすることではない。
「……クリス、寂しがってるだろうな」
オードリーにももちろんが会いたいし、会える日を待ち焦がれている。だが、オードリーは大人で、会えない事情も一番理解しているだろう。それを思えばクリスはまだ子供だ。今度は直ぐ会えるよ、と言って別れたのは、もう三ヵ月以上前になる。図らずもその言葉が嘘になってしまったことが、レイモンドには悔しかった。
他の男との子だとは言え、レイモンドにとっては、クリスは我が子のようなものなのだ。
「ちゃんと迎えに来るからな」
追い返されて、遠くから屋敷を見上げつつ、レイモンドはその意思を固くしていった。