お宿の看板娘でしたが、王妃様の毒見係はじめます。


「ほら、ロザリーさん、背筋が曲がっているわ」

「すみませんっ」

ケイティにぴしりと背中をたたかれて、ビクリと体を震わせると、向かいに座るクロエがくすくすと笑う。

「ロザリーは小動物みたいね。友達が飼っている猫を思い出すわ」

馬鹿にされているのか褒められているのか分からず、ロザリーはクロエを見上げた。

毎日、こんな感じでケイティとともに、令嬢教育が行われている。
お茶会の作法、夜会の作法。それからダンスレッスンに、会話術。多くの教師が呼ばれ、ロザリーは毎日頭がパンクする勢いで知識を詰め込まれている。
クロエはたまに冷やかしにやって来ては、一緒にお茶を飲んでくれる。

「うちの親戚筋は全部頭に入った?」

「なんとか」

「ならそろそろいいんじゃないの。お母様」

「そうね。国王様の謁見の許可もいただけそうなの。いよいよ、社交界デビューね」

意気込むケイティに、にやにやと笑うクロエ。

「デビュタントは必ず王族と挨拶をするの。国王様からお言葉をいただいて、初めて貴族令嬢として認められるわけ」

「本当ですか? が、がんばりますっ!」

ようやく王城にはいれるとあって、ロザリーもやる気満々だ。
叶うならば、ザックの姿を見ることができますように、とロザリーは手をギュッと握って祈った。
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