嵐を呼ぶ噂の学園② 真夏に大事件大量発生中!編
夏休みということもあって駅への一本道は多くの家族連れでいっぱいだった。


ずらずらと連なる中に紛れるようにして俺たちは歩いていた。


夏の昼は長い。


まだ太陽が居座っていて暑さと眩しさを忘れさせてはくれない。



「波琉くん、しりとりしよう」



落胆しているオレに汐泉は優しく声をかけてくれた。


やっぱり汐泉は優しい。


自分があまり楽しめなかったにもかかわらず、向日葵のような真っ直ぐで明るい笑顔をこちらに向けてくれる。



「じゃあ、私から。今日はご苦労様でした。はい、じゃ、た、から」



え?


オレの頭に疑問符が浮かぶ。



「た...たい焼き」


「気にしなくていいよ。はい、よ」


「四ッ谷(よつや)」


「優しい波琉くんを見られて嬉しい」



これって...


もしかして...。



「イルカ」


「帰りたくない、まだ」


「だ...。だるま」



次は...何が来る?


意味深なメッセージの連打しりとりにオレは冷や汗が止まらない。



「真っ直ぐに...私を見て」



ひとまず汐泉を見つめてみる。



「...テニス」



オレがそう言ったら、汐泉はふっと笑ってオレの腰に両手を回した。


灼熱の太陽に負けないくらいオレの体温も高くなった。



「そろそろ...言っていいかな?」



力が強くなる。


色んな親子に冷やかされたり、お母さんに目を塞がれている子どももいた。


オレはちらりとその様子を伺いながら汐泉の次の言葉を待った。



「好き...大好き」
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