嵐を呼ぶ噂の学園② 真夏に大事件大量発生中!編
はあはあ...と息を切らしながらやって来たのは再度登場の星名湖杜だった。


感心するレベルのストーカー気質。


今日は最後までオレに着いてくるのね。


もはや、呆れもしない。


無。


早く逃れたいとは思うが、どうしようが着いて来てしまう。


無心になり、この状況を突破することが大事だ。


オレは無視して歩き続ける。


自宅まで最寄り駅から徒歩20分かかる。


やっすーいボロアパートに住んでいるもんだから仕方ない。



「青柳くん、聞こえていたら返事して下さい!」



するもんか。


ったく、邪魔ばっかしやがって。



「青柳くん!」


「だからなんだっつうの?!」


やべ...。


ムキになって振り返ってしまった。


ああ、終わりだ。


また星名さんのペースに乗せられてしまう。



「渡したいものがあるんです」



そう言って彼女はバッグから小さな紙袋を取り出した。



「気に入って頂けなければ捨てて下さっても構いません。ひとまず受け取って下さい」



わざわざこれを渡すために着いて来たのか?



「バカだな」


「ほえ?」


「わざわざ持って来なくていいだろ」



オレがそう言った瞬間、星名さんは突然泣き出した。


オレ、なんかヤバいこと言った?


つうか、夜中の住宅街で泣くの止めてくれません?


酔っ払ったサラリーマンがふらつきながらこちらを見てくる。


オレ、あのオヤジに悪者だと認識されやしないかとハラハラしていると案の定声をかけられてしまった。



「兄ちゃん、女の子を泣かせちゃダメだって」



いやいや勝手に泣き出したんですけど。


オレ、たぶん悪いことしてないから。



「あのさ...」



「すみません、突然泣いてしまって。わたし、青柳くんに本音を言っていただけて嬉しくなってしまって...」


は?


何を言ってる、コイツ?



「なんというか、今までずっとよそよそしかったのでやっとキョリが縮まったというか...」



勝手にキョリ縮めないでくれるかな。


オレは足を速めた。



「逃げるんですか?!」


「別に逃げてない」


「逃げてないと言いつつ完全に逃げ態勢じゃないですか!これだけは受け取って下さいとお願いしたはずです」


「ありがとう。じゃ、サヨナラ」



オレは星名さんの手から紙袋を奪い取ると追いつかれないように逃げた。


しかし、


彼女の足音が聞こえないのが分かるとオレは後ろを振り返った。


...やべ。


星名さんはぶっ倒れていた。
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