偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
メニュー開発は大忙し
四月も後半。
春眠暁を覚えず──ということわざもあるように、この時期は眠り心地が良くてつい寝過ごしてしまいそうになる。
でも今日は、そうもいかない。
ムクリと起き上がり、眠たい目をこすりながら出勤の準備を始める。メイクを手早く済ませ髪を梳くと、それをひとつに束ね部屋を出た。
「お父さん、お母さん、おはよう! 今日は朝ごはんいらないからー。行ってきまーす!」
階段を駆け下りながら姿の見えない両親に声を掛け、験担ぎのパンプスを履くと玄関を飛び出した。
最寄りの駅まで歩いて十五分ほど。普段はのんびり歩く道のりも、今日は気が急いているせいか小走りになってしまい、駅まで十分足らずで到着。
グッドタイミングで構内に入ってきた、いつもより三十分ほど早い電車に乗る。車内はガランとしていて、いつもなら座ることのできない席に腰を下ろした。
今日はハードな一日になるはず。そんな日に座って行けるのはありがたい。
バッグから新メニューのレシピが入ったファイルを取り出す。ホッと一息つくと、おもむろにそのファイルを開いた。
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