偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
スラックスのポケットに手を突っ込んで立っているさまは、相変わらず……カッコいい。モデルかっ!!と心の中で叫ぶと、どこかにカメラマンがいるんじゃないかと辺りを見渡した。
「何キョロキョロしてるんだ。ドアにぶつけて、頭でもおかしくなったか?」
「おかしくなんかなってません! っていうか、ぶつけた原因は社長じゃありませんか!」
「さあな」
さあなって、私の話はスルーですか? はいはい、私が勝手にぶつかっただけですね。よーくわかりました。
社長にもうこれ以上何を言っても無駄だと、こっちもスルーを決める。
さっさとクッキー食べなきゃ。お腹がペコペコで倒れそうだよ。
今度こそ本当にキッチンを出ようと、もう一度ノブを握ってドアを開けた。
「どこに行くんだ?」
逢坂社長に呼び止められ、振り返らずその問いに答える。