偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

 白亜の灯台を見上げてトホホと苦笑を漏らすと、目の前に真史さんの手がひょいと現れる。その手のひらの上には、真新しい南京錠が乗せられていた。突然のお出ましに、一瞬何がなんだかわからない。でもしばらくしてそれが、今話していた南京錠のことだとたどり着いた。

 でもなんで南京錠?

 私と真史さんの関係は、永遠の愛を誓うような間柄ではない。実際はただの社長と従業員、それ以上でもそれ以下でもない。

 そりゃあ私はふたりの絆が深まれば嬉しいに越したことはないけれど、真史さんにとってはきっと迷惑な話。両親や伯母たちを騙すための偽装恋愛なのに、どうして愛を誓わなきゃならないと思うだろう。

 なのにどうして南京錠?

「あのですね、真史さん」

「何?」

「この南京錠、私達の関係に必要ないと思いますけど」

 こういうことは、中途半端が一番いけない。遊び半分でやっては、本気で愛を誓って南京錠を掛けている恋人たちに申し訳が立たないというものだ。



< 101 / 195 >

この作品をシェア

pagetop