偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
そんなこと真面目な真史さんなら、すぐにわかりそうなものなのに……。
真史さんの手のひらから南京錠を取り上げると、それをグイッと彼の前に差し出す。
「こういうことは冗談でするものじゃないと思うんです。真史さんに本当に好きな彼女が出来たとき、その人とふたりで来てください」
心にもないことを言って胸が痛い。
そんな日が、永遠に来ないといいのに──本心はそう思っているのに、口はいとも簡単に嘘をつく。それなのに胸が痛いとか私ってホント、心の小さい嫌な奴だ。
人の幸せを願えない人間に、本当の幸せなんて訪れるわけがない。
きっと今の私は、醜い顔をしているだろう。
真史さんに南京錠を返すと、その顔を見られないようにクルッと背中を向けた。
「本当に、そう思ってるのか?」
「え?」
意味のわからない言葉が、突然耳に飛び込んでくる。背中に視線を感じて振り向くと、怒った顔の真史さんが私をまっすぐ見つめていた。