偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
「つべこべ言ってないで、ここに名前を書け」
「書きません!」
「書け!」
「書かないって言ってるでしょ!」
「強情だな。わかった、だったら俺が書く」
「えぇ!? なんでそんな勝手なことを。真史さん、いい加減に……」
してください──と言う前に、真史さんはポケットからペンを取り出して名前を書こうとしている。
ちょ、ちょっと、冗談でしょ?
慌てて手を伸ばすと、真史さんから南京錠とペンを取り上げる。
「真史さんに書かれるくらいなら、自分で書きます!」
勢いに任せ“真史”と書かれた隣に、“朱里”と自分の名前を書いた。
「これでよし」
ホッと一息つくと南京錠を見つめ──ハッと我に返る。
わ、私、なんてことをしてしまったの! これでよしとか嬉しげに、何言っちゃってるの?
やってしまったと、南京錠とペンを持ったまま頭を抱える。と私の手の中がスッと軽くなった。
「真史と朱里、なかなか似合いじゃないか」
何のんきなことを……。似合いとか、そんなこと言ってる場合じゃないと思うんですけど。
灯台の横の階段に腰を下ろすと、真史さんを見上げる。