偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

 そうだけど、そうじゃない。彼氏だけど、彼氏じゃない。私たちの今の関係は複雑で、答えに困ってしまう。

「俺がはじめての彼氏だろ?」

 グズグズ戸惑っていると、店の駐車場に車を停めた真澄さんがグイッと顔を寄せた。その迫力に、慌てて口を開く。

「い、一応、彼氏……でしょうか」

「一応って、お前なぁ。もっと自信持って言えよ。じゃないと、俺の彼女は務まらないぞ」

 ポンともう一度私の頭に手を置くと、穏やかな顔を私に向けた。それを何かに例えるとしたら、ほんわか温かい小春日和のような笑顔と言ったところだろうか。

 会社では絶対に見ることが出来ない、その笑顔から目が離せない。

 なんでそんな表情を私に向けるの? 私は真史さんの、本当の彼女じゃないのに……。

 でもそう思う反面、どこかで幸せを感じている自分もいて。よくわからない厄介な気持ちに、ははっと苦笑にも似た吐息が漏れた。





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