偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

「ま、いっか。そんなことより、腹ごしらえ腹ごしらえ」

 いそいそとデスクに向かうと、一番下の大きな引き出しからクッキーの入った箱を取り出す。フタを開けると数種類の美味しそうなクッキーが勢揃いしていて、目移りしてしまう。

「ど・れ・に・し・よ・う・か・な……」

 子供の頃からの定番、数え歌歌いながらクッキーを順番に指差す。歌の最後に指さしていた丸く赤いジャムが乗ったクッキーを取り出すと、小袋を破いてそれをポイッと一口で頬張った。

「う~ん。サックサクで美味しい。この甘いジャムが、いいアクセントになってるぅ」

 両頬を手で押さえ、どこぞのテレビのレポーターよろしく食レポをしてみる。よくあるクッキーだけど、空腹も手伝ってこの上なく美味しい。二枚三枚と次々に食べると、昨日自販機で買ってデスクに置いてあったお茶を飲み、それを喉へと流し込んだ。

「ふう~、ごちそうさまでした。さてと、そろそろ調理をはじめないとね」

 お茶のペットボトルを片付け満足して箱のフタを閉めようとしたら、ふと逢坂社長の顔が脳裏にちらつく。



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