偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

「かなり渋滞してるな。こんなことなら、わざわざ遠回りする必要なかったか」

耳に届いたのは、ゆったりとした真史さんの声。振り返り彼の横顔を見つめると、渋滞しているというのにさほど苛立つこともなく、落ち着いた様子にホッとする。

「ずっと運転させてしまってすみません」

「そんなこと気にするな。それに……」

 言葉を一度止めた真史さんは、チロッと私を横目で見ると、ハンドルを握っていない方の手を伸ばす。それを私の頭に乗せると、ポンポンと二度撫でた。

「朱里の運転じゃ、俺も命がいくつあっても足りない」

「な、なんですか、それっ! 真史さん、ひどい!」

 まあ確かに、年に数回ほどしか乗らないペーパードライバーの私の運転じゃ、私だって心配だけど。だからって、そんな言い方しなくてもいいのに。

 頭に乗っかっている手を払いのけると、唇を尖らせて怒ってみせた。

「そんな顔して怒るな。冗談に決まってるだろ。じゃあ今度のデートは、朱里に運転してもらうことにするか」

「は?」

 突然の提案に驚いて、目を丸くする。次のデートの誘いは嬉しいが、運転は如何なものか。



< 120 / 195 >

この作品をシェア

pagetop