偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
市内まで戻ってくると、真史さんオススメの蕎麦屋で夕食を済ませた。楽しかったドライブデートも、自宅の前まで送ってもらい終わりを告げる。
「朱里は連休残りの二日間、予定はあるのか?」
車のエンジンを切り、ハンドルに体を預けた真史さんがこちらに振り向く。青白い街灯の光が差し込んでいるからか、その顔が凄艶に見えた。ドクンと心臓が脈打ち、戸惑いから少し視線を逸らす。
「部屋の掃除をしたら、撮りためたテレビ録画を見るくらいでしょうか」
二十六にもなる女が休日にすることかと、自分で言って胸が痛い。でも本当のことで、今さら嘘を言っても仕方がない。
「友人と、映画に行くとかしないのか?」
「仕事に熱中しすぎて、ここ何ヶ月か連絡取ってなくて。急じゃ連絡しにくいというか、きっとみんな彼との予定が入ってると思うので」
せっかくの三連休。女友達と過ごすより、彼氏と過ごすほうがいいに決まってる。いくら私が恋愛に疎くても、『彼と私どっちが大事なのよ?』などと言って、無理やり誘うようなそんな野暮なことはできない。
でも何。私のことがそんなに気になるなんて、真史さんもしかして明日も誘ってくれるの?と一瞬期待したが、そう上手くことは運ばなかった。