偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

「そうなのか。俺は明日明後日と、仕事の付き合いでゴルフだ」

「あぁ、そうなんですね……」

 世の中そんなに甘くない。私の小さな期待も木っ端微塵に消え去り、諦めのため息をつく。

「朱里」

 艶めかしい声が鼓膜を震わす。

「寂しい?」

 急に核心を突くようなことを言われて顔を上げた。

 どうしてそんな事を言うのかと、真史さんの目を探る。彼自身も寂しいような何かを期待しているような、よくわからない気持ちに目が揺らいでいて、その表情から目が離せなくなってしまった。

 どう答えるべきか。少し迷った挙げ句、自分の正直な気持ちを答えた。

「今日のデートが楽しかったから、えっと、その……寂しいです」

 本当の彼女じゃないのに寂しいとか、きっと真史さんは困っているに違いない。でも真史さんに、真史さんだけには嘘は付きたくなかった。

 私からの、一方的な想いを押し付けているようで心苦しい。真史さんがどんな言葉を返してくれるのかわからない私の胸は、不安で張り裂けそうだ。

 唇を真一文字にキュッと閉じ、少しだけ目線を下げた。

「朱里は……」

 名前を呼ばれて、ピクッと体が跳ねた。



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