偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

 そんな真史さんをみて、すぐに後悔。でも一度言ってしまった言葉は消せなくて、自分のバカさ加減に「はあ……」と大きなため息を漏らしてしまう。

 もう、いいや。

 言いたいことを言わないのは体に悪い。思ったことは口にする、それが私の長所。まあ母にはよく『それ短所』なんて言われるけれど。

 真史さんをまっすぐ見据えると、気持ちを整えるように呼吸する。心が決まると、ゆっくり口を開いた。

「真史さんは誰にでも、キス、するんですか?」

 なんだか嫌味な言い方だ──と、我ながら思う。思うけれど、他に聞き方がわからない。

「誰にでもなんて、するわけないだろ」

 顔から腕を外し体を起き上がらせた真史さんは、心外だと言うように険しい顔をしてこちらを向いた。

「じゃあなんでっ……私にキスしたんですか?」

 真史さんの顔が怒っているようで激しく動揺してしまい、一瞬ケンカ腰になりそうな口調を深呼吸で落ち着かせた。

「理由なんてない。朱里にキスがしたかった、それだけだ」

「はあ!?」

 思ってもみなかった直球ストレートな言い訳に、唖然とするしかない。

「したかったから……って、真史さん三十二歳ですよね? そんな子供みたいな言い訳するなんて」

「そうだな。でも俺も、どうしていいのかわからないんだよ」



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