偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

 クッキー食べてきますと宣言してきた手前、何も持っていかないのは人としてどうよ? まだキッチンにいるかどうかわからないけれど、何枚か持っていくべきだろうか?

「……もう、仕方ないなぁ」

 箱の中から適当に三枚取り出すと、それをエプロンの前ポッケに放り込む。手早く箱を閉めデスクにしまい、キッチンに戻ろうとドアの前に立った。

 キッチンに通じるドアは二ヶ所。ひとつは今いるフロアからのドアで、もうひとつは廊下と繋がっているドア。何しに来たのか知らないけれど、今から試食会の準備に入るところ。できれば社長には、手の内を見られたくない。廊下につながるドアから出ていっていて、逢坂社長がいないことを願うけれど……。

 なんでこっちがコソコソしなきゃいけないんだと思いながら、息を潜めゆっくりドアを開けた。

「遅かったな。どんだけ食べたんだ? 太るぞ」

「げっ……」

 思わず心の声が出てしまう。






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