偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
本当の恋人だったらよかったのに
デートの日から三日。
いつもより早く会社に到着。もちろんフロアには、まだ誰もいない。
「何してるんだろ、私」
早く出社したからと言って、真史さんに会えるわけでもないのに……。
自分の席に座り、ぼそっと独り言をつぶやく。デスクに突っ伏し目を閉じると、背後でドアの開く気配にビクッと飛び起きた。
「おはよう。やっぱりいたか」
聞き覚えのある声に、驚いて振り返る。すると真史さんがドアにもたれて立っていた。
どうして? なんでこんな時間に、真史さんが開発事業部のフロアに来るの?
「朱里?」
「……え? あ、はい。おっ、おはようございます!」
まさか、私の思いが通じたとか?
真史さんの突然の登場に、一瞬言葉を失う。取り繕うように立ち上がり、頭を下げた。
「何かしこまってるんだ。まだ誰もいない、普通でいい」
「で、でも真史さん……じゃなくて社長。ここは社内ですし、公私混同はやめたほうが……」
「真面目だな」
目の前まで来た真史さんは、私の頭をクシャッと撫でた。
真史さんは何の気なしにやっているのかもしれないけれど。三日前から真史さんのことが頭から離れなかった私の心臓は、バクバク音を立て体温上昇。頭を撫でられただけなのに、頭の中はプチパニック状態。