偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
企画書も新しく作り直して準備万端。前回の試食会で真史さんに言われたことも踏まえて、自分でも納得できるものが出来上がったのに、やはり緊張は隠せない。
仕事には人一倍厳しい真史さんのことだ、ふたりの関係性が以前と変わったとしても、甘い顔は見せてくれないだろう。それに……。
「所詮、偽りだし……」
「え? 何か言いましたか?」
「あ、ううん、なんでもない」
つい心の声が漏れてしまった。危ない危ない、気をつけなければ。
何事もなかったかのように歩き出しフロアに入ると、一目散にデスクへ向かう。
「市ノ瀬くん、コンビニ行かない?」
「そうですね。僕も味見しすぎて腹減ってないし、パンでも買っておきます」
そうと決まればと財布をつかみ、市ノ瀬くんとフロアを出た。
ありがたいことに、コンビニは会社の真隣。廊下を進みエレベーターホールに向かっていると、後ろから声をかけられた。
「高坂さん、ちょっと!」
振り向くと、少し離れたところから女性がふたり、こっちに走ってくるのが見える。見覚えのない人に声をかけられて、何事?と首を傾げた。