偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
キャリアウーマン風にタイトなスーツを綺麗に着こなしているのを見れば、秘書課あたりだろうか。
そんな彼女達が、メニュー開発事業部の私になんのよう?
近づいてきた彼女たちの表情は思わしくない。面倒なことじゃないといいけれど……。
「市ノ瀬くん、ごめん。私のぶんのパンも買ってきて」
長話するつもりはないけれど、要件がわからない。もしもの時のことを考えて、市ノ瀬くんを先に行かせる。心配そうな目をする市ノ瀬くんがエレベーターに消えるのを待つと、突然現れた女性たちに向き直った。
「高坂ですけど、何の御用でしょうか?」
「少し聞きたいことがあるの。一緒に来てくださる?」
喋り口調は丁寧だが、その奥にはかなり棘がある。目は笑っていないし、『行きません』とは言わせない雰囲気を醸し出していた。
「わかりました。でもこのあと大事な仕事があるので、手短にお願いします」
仕方なく、彼女たちのあとについていった。