偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
連れて行かれたのは、本社ビル五階にある女性秘書たちが使うスタッフルーム。ドアが開くと、中にひときわ綺麗で美人な女性が椅子に腰掛けていた。その人は私を見つけると、冷ややかな目線をよこす。
「あなたが、高坂朱里さん?」
「……そう、ですけど」
まるで品定めでもするかのように、私の全身をくまなく見る目は刺々しい。背筋がゾクッとする感覚に身を縮めた。
一体、誰──。
胸元に目をやると、『秘書課 三浦麗華』と書かれた社員証が見えた。
やっぱり秘書か……。
年齢は二十代後半といったところだろうか。グレーのスーツにハイヒール。長い髪は綺麗に巻かれていて、デキる女の典型的なスタイルに小さく頷いた。
どこをどうとっても私とは全く共通点のない人が、なんで私を呼び出すのか。
そんなことを考えながら三浦さんの冷たい視線に耐えていると、値踏みが終わったのか彼女がフッと冷笑を見せた。
「あなた最近、誰かとどこかに行った?」
誰かとどこか……。
そう言われて、思いつくのはひとつしかない。これは危険だと、胸が早鐘を鳴らす。
もしかして──。