偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
三浦さんを見れば『私は全部知ってるのよ』と言わんばかりの強固な視線で、私を見つめていた。
彼女はきっと、私が真史さんと出かけたことを知っているんだ。だったら今さら、誤魔化しようがない。でも私は真史さんの本当の彼女じゃない。偽りの恋人なのに、どう答えればいいのだろうか。
仕事にしか使ってない脳を、ここぞとばかりにフル回転させる。でも結局何も浮かばなくて、こんなことになるなら少しぐらいは恋愛を経験しておけばよかったと後悔し苦笑が漏れた。
「余裕ね。何笑ってるの?」
「あぁ、えっと、すみません」
「真史と海に行って楽しかったから、笑いがこみ上げるとか?」
「え?」
彼女の口から『真史』の名が出て言葉を失う。
なんで三浦さんが、真史さんのことを呼び捨てにするの?
まるで彼女のような言い方に、胸がズキリと激しく痛む。
「どうして彼と一緒にいたの? まさかあなた、真史と付き合ってるわけじゃないわよね?」
苛立っているのか、その口調は冷然で厳しい。
なんて答えるのが一番いいのだろうか、変な答え方をして真史さんに迷惑はかからないだろうか。頭の中で不安定な気持ちが動き回り、答えが見つからない私は口を開くことができないでいた。