偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

「ま、真史さん、何するんですか!? ここは会社で、しかも社長室ですよ? キ、キスなんてしたら怒られます」

 動揺しすぎて、早口でまくしたてる。誰かに見られている訳でもないのに『怒られます』とか、誰に怒られると言うんだろう。

 あぁーもう! 頭の中が大混乱だ。

「真面目だな」

「真面目の、どこが悪いんですかっ?」

「いや、悪くない。朱里のそういう真面目で、でも素直じゃないところが俺は好きなんだからな」

「……す、好き……」

 突然の告白に、脳の機能が停止する。

 今の『好き』は、どういった意味の好きなんだろう。

 ほら、好きにもいろいろあるじゃない。寵愛の好きもあれば、友愛の好きもある。親身の好きや、敬慕の好きとか。

 私と真史さんは家族じゃないから親身ではないし、尊敬を意味する敬慕でもなさそうだ。友愛も友達というわけでもないから、なんだかしっくりこない。

 じゃあ残るは寵愛……って、えぇーっ!? 寵愛って真史さん、私のことを愛しているの!?

 いや、それはないない。だって真史さんから偽装恋愛をいい出したんだよ。それにお見合いのときに本気かと聞いたら、『もちろん本気じゃない』って即答されたからね。




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