偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
誤魔化せない気持ち
週明けの月曜日。今日から新店舗の研修が始まる。
普通なら会社には行かず直接店舗へ行くのだけれど。今日に限ってバイトさんやパートさんに見せる研修用のDVDを忘れてしまい、いつもどおりに会社へと向かっていた。
初日から何やってるのよ……私。
自分に呆れながら会社に到着すると、ロビーが騒がしいのに気づき足を止める。何人かの女子が集っている中に、課は違うが同期の女性を見つけて声をかけた。
「沢渡さん、おはよう。これ、何の騒ぎ?」
女子だけだはない。辺りを見渡すと出社してきた男性社員も足を止め、驚いたような顔をして話し込んでいるから、これはただごとではないと彼女の顔を覗き込んだ。
「社長、結婚するらしいわよ」
「え? 今なんて……」
自分の聞き間違えかもしれないと、もう一度聞いてみる。
「だから。逢坂社長、結婚するんだって。相手は秘書課の人じゃないの? 役得だよね~」
真史さんが結婚、しかも相手は秘書課……。
沢渡さんはまだ何か話しているけれど、どの言葉も一切耳に入ってこない。それどころかドクンドクンと脈が速くなり、胸が締めつけられるように痛みはじめた。
「うっ……」
胸元をギュッと掴み、その痛みに耐える。