偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
つながる気持ち、伝わる愛
真史さんにメールを送ってから三時間後。今日の研修を終えると、挨拶を済ませ従業員通用口から外に出た。
五月半ばの夕暮れの爽やかな風が、肩まで伸びた髪を揺らす。少し乱れた髪を手ぐしで整えると、おもむろにバッグからスマホを取り出した。
「着信もメールもなし……」
真史さんにメールを送ってから何度も確認しているけれど、忙しいのかSNSは未読のまま。
彼は新進気鋭の企業の社長。私なんかが全く及ばないくらい忙しい身で、一社員に構っていられないのはよく分かる。よくわかっているけれど、既読にくらいなればいいのに思ってしまうのは欲張り過ぎだろうか。それとも私、拒否されてる?
どん底に落ち込み、大きなため息が漏れてしまう。
できれば直接会って気持ちを伝えたかったけれど、今日のミスで嫌われちゃったのかな。何の予定も聞かずいきなり今日の今日で会いたいと言ったのも、無理があったのかもしれない。
「仕方ない。ひとり寂しく帰るとしますか!」
カラ元気でも、ないよりマシ。そのうち本当の元気が戻ってくるだろうと、ゆっくり歩き出す。