偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

 さっき涙を拭ったばかりなのに、いつの間にか目にはいっぱい涙が溜まってしまい、真史さんがぼやけて見える。溢れ出る感情が抑えきれなくて、ポロポロと涙がこぼれだしてもそのまま構わず話を続けた。

「真史さんの気持ちや考えていることがわからないこともあったけれど、初めてのデートも楽しかったし、驚いたけれどキスしてもらえたのも幸せでした。今日仕事でミスをした私を助けてくれた。真史さんは社長だから当たり前だと言うけれど、私は改めて真史さんという人の存在の大きさ、自分の真史さんの想いの深さを知りました」

 真史さんは何も言ってくれない。その沈黙に胸が痛むけれど、最後が泣き顔ではダメだと無理矢理笑ってみせる。

 私を見つめる真史さんの表情から、今の感情を読み取ることはできない。でもきっと今の私の告白は、真史さんを困らせているに違いない。それでも言わずにはいられない、その気持だけはわかってほしかった。

「でも今日で、今この場で、その想いに終止符を打ちます。ごめんなさい、真史さんの気持ちも考えず、勝手なことばかり言って。三浦さんとお幸せに……」

 これ以上惨めな自分を見られたくない──。



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