偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

「さっきから聞いていれば、勝手なことばかり言って。お前はそんなに俺を、他の女と結婚させたいのか?」

 他の女? 言っている意味が、よくわからない。

 小首をかしげ、真史さんを見つめる。

「秘書の三浦さんとよりを戻したんじゃないんですか? 会社の人たちが言ってましたよ、社長が秘書と結婚するって」

 私の話を聞いて、真史さんが呆れたようなため息を漏らす。

「廊下を歩きながら親父と結婚の話していたとき、それを誰かが聞いていて、そんな噂が広まったんだろう」

 情報通の沢渡さん話だし周りにいた男性社員の人たちも話していたから、間違いない情報だと思っていたけれど。真史さんの怖い顔を見ると、どうやら違ったらしい。

「それは噂の勝手な独り歩きだ。俺は三浦とは結婚しない」

「じゃあ誰と結婚するって言うんですか?」

 まだ他にも付き合ってる人がいたとか? それとも大きな会社の御曹司にありがちな、突如現れた許嫁?

 どちらにせよ、私には関係のない話だ。

「この手、離してくれませんか?」

 口調に怒りの色を込める。でもそんな私の些細な反抗に、真史さんが怯むはずもなく。手は離されるどころか、ギュッ顔を押しつぶすように挟み込まれてしまう。



< 183 / 195 >

この作品をシェア

pagetop