偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

「この鈍感さ、どうにかならないのか。抱きしめてキスしても気づかないなんて、この先が思いやられる」

「な、なんですか、鈍感って。勝手にキスしておいて、よくそんなことが言えますね! それにこの先が思いやられるとか、私と真史さんとの関係に、この先なんてありませんから!!」

 身振り手振りを付けて強気で言い放つ。さすがに真史さんも私の気迫に負けたのか、頬から手を離した。でもその手で私の左手の指先を掴むと、そっと上に持ち上げる。

 まるで愛しいものを扱うような仕草に、触れられている指先から目が離せない。

「俺は朱里と、この先もずっと一緒にいたいと思っている。他の誰とも結婚しない。するのは朱里、お前だけだ。そんなに俺は信用ないのか?」

 ため息を付き悲しげに項垂れる真史さんを見て、自分はとんだ勘違いをしていったことに気づく。

「……真史さん、それってもしかして」

「ああ、プロポーズだ」

 真史さんはそう言うと私が呆然としている間に、指輪を薬指にはめてしまう。洗練された印象のストレートラインの指輪が、ダイヤモンドの眩い輝きを際立たせている。

「私が、真史さんからプロポーズされるなんて……」

 これは夢か幻か。こんな盆と正月が一緒に来たような衝撃的な出来事が、この世に存在するなんて。想像の域を遥かに超えていて、現実のことなのかといまいちピンとこない。



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