偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

「ここは会社じゃないんだぞ。いつまでそんな堅苦しい口調で話すつもりなんだ」

「えぇ? そこ……」

 あまりにも意外な言葉に、拍子抜けしてしまう。そんなことを気にしていたなんて、全然気づかなかった。

 でもこればかりは仕方がない。会社では社長と従業員、少し前までは偽りの恋人同士だったんだから。それからいろいろあって自分の本当の気持ちを彼に伝えて、どういうわけかプロポーズされて本当の恋人になったのは、まだ小一時間前の話し。

 それをいきなり『いつまでそんな堅苦しい口調で話すつもりなんだ』と言われても、わかりましたとは簡単に言えない。

「ここで立ち話もなんだな。この続きは部屋で話そう」

 抱かれたままの腰を引かれエレベーターに乗り込み着いたのは、超高層タワーレジデンスの四十階。

「どうぞ。あまりきれいに片付いてないが、まあ気にするな」

「お、お邪魔します」

 男性の部屋に上がるなんて人生初の経験に、恐る恐る玄関に入る。真史さんの後について長い廊下を進み、広いリビングへと足を踏み入れ立ち止まった。

 これのどこが、きれいに片付いてないというのだろう。



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