偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

「ま、真史さん!?」

「可愛すぎるだろう」

 は? 一体何のこと? どこの何が可愛いのか、さっぱりわからない。

「俺は大人だからな。なんとか理性を保って我慢してやってるというのに、お前なにげに俺を誘ってるのわかってるのか?」

「誘ってる? 私が? どこに?」

 そんな話したっけ? ふたりの会話を少し遡ってみても、思い当たるフシがないんですけど。首を傾げれば、呆れたように息を吐き、でも優しく私の頬を包み込んだ。

「悪い。もう少し我慢するつもりだったけど、どうも無理みたいだ」

 そう言うやいなや、真史さんはワインを口に含むと、そのまま私に口づける。口移しでワインが注がれ、収まりきらなかったワインが唇から首筋へと伝う。真史さんはそれを、すばやく舌で舐め取った。そのときの顔がえらく妖艶で、またドクンと心臓が大きく波打つ。

 これでは心臓がいくつあっても足りない。

「ベッドルームへ連れて行く」

「ふぇ?」

 衝撃的な言葉に、どこから出たのかわからない変な声が漏れる。

 心臓がどうとかこうとか、そんなこと言ってる場合ではなくなってしまった。

 ベッドルーム──それが何を意味するのか。



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