偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

 この状況下、ベッドルームですることはただひとつ。いくら恋愛ごとに疎い私でも、そんなことぐらいは容易に理解できるというもの。

 でもだからといって、それを簡単に受け入れる訳にはいかない。なにせ私は恋愛初心者、まだ誰とも交わったことのない処女……なのだから。

 首をふるふる何度も横に振り、今すぐは無理と伝えてみる。でもそんなこと、今の真史さんには全く通用しない。

 ソファから身を起こした真史さんは、私の体をやすやすと抱き上げる。急に目線が高くなり「キャッ」と小さな叫び声を上げると、真史さんの首にしがみついた。

「この日をずっと待ちわびていた。もう三年になるか」

「さ、三年!?」

 三年前と言えば、真史さんがまだメニュー開発事業部の部長だったころだ。そんな前から、今日という日を待っていたということは……。

 ん? どういうこと?

 真史さんに抱きかかえられたまま、彼のことを見つめる。

「そばで朱里の頑張りを見ていたからな、惚れるのにそう時間は掛からなかった。でもその頃は社長就任のこともあったし、すぐには告白できなかった」

 真史さんは私を抱えたまま器用にドアを開けると、十畳ほどある広い寝室に置かれた大きなベッドに私を下ろした。彼も隣に腰を下ろす。


< 191 / 195 >

この作品をシェア

pagetop