偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

「見合い話が来て写真を見たときは、正直驚いたよ。でも逆に、これはチャンスだとも思った。社長になった俺が告白しても、仕事最優先の朱里が素直に了承してくれるとは思わなかったしな。見合いで偽装恋愛の話をオッケーさせて、その間にお前を落とすつもりでいた」

 そうだったんだ。初めて聞く話に、心がふわりと温まる。

 ふと顔を上げると、真史さんの力強い手が私を引き寄せる。背中に回った腕に力が込められ、抱きしめられてことに安らぎすら感じる。

 衣服越しに、真史さんの胸の鼓動が伝わってくる。その音が自分の鼓動とシンクロすると、彼の胸にそっと頬を寄せた。真史さんの体がピクッと反応をみせる。

「でも取り越し苦労だったみたいだな。朱里も俺のことが好きだったなんて、全然気づかなかったよ。でも嬉しかった」

 頭上から落ちてくる優しいまでの声色に、徐々に全身が熱を帯び始めた。

「私だって大変だったんですからね。好きな人が社長になってしまって、これはもう絶対に相手にされないって、真史さんへの気持ちを心の奥に封印して……」

 思い出したら、また涙が出そうになっちゃうじゃない……。



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