偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

 ズズッと鼻を鳴らし、それを我慢する。

「泣くほど、俺のことが好きみたいだな」

 イジワルな顔をした真史さんが、私の顔を覗き込む。顔をしかめて怒ってみせると、尖らせた唇に甘いキスが落とされた。

「その顔が、俺を誘ってるって言ってるんだ」

 ゆっくり体が倒されて、ベッドに横たわる。真史さんは私の上に馬乗りにまたがると、妖艶に微笑んだ。

「恋っていうやつは、なかなか計画通りにはいかないな。やっぱり素直に、心のままに行動したほうがうまくいくらしい」

「じゃあ私はその計画とやらに、まんまと引っかかったわけですか?」

「まあ途中で脱線したけどな。でも最後は軌道修正して計画通り、朱里を手に入れることができた」

 嬉しそうに笑う真史さんに、そっと腕を伸ばす。真史さんはその手を掴み、指先にチュッとキスをした。

「今日店にいるときに俺が言ったこと、覚えてるか?」

「店で、ですか?」

 店と言えば、伊勢どりが届かないというアクシデントが起きた時のことだろうか。真史さんに助けてもらい、ミスは最小限に抑えられたけれど。その時たしか、何か言われたような……。



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