偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
頭の中で、真史さんとの記憶をたどる。ふと脳裏にうっすら浮かんだのは、ビシッと腕を伸ばし私を指さす真史さん。そしてその後……。
『いいか高坂。この代償は高いぞ』
あ、そうだ。その意味がわからず、呆気にとられたのを思い出した。でも未だにわからない、『この代償は高い』って一体どういう意味なのだろう。
「その顔は、思い出したみたいだな。今日の代償、今すぐここで払ってもらおうか?」
「え? やっぱり損害が出たんですか? それって、おいくら位なんでしょうか?」
損害が出たなら仕方がない、自分がしでかしたミスだ。でも今の私の貯金って、いくらぐらいあっただろう。足りなかったら、両親に頭を下げるしかない。
しかしこんな話、ベッドの上ですることなんだろうか。ため息をつき、真史さんを見上げる。
「ああ、高額だ。朱里、お前の全部が欲しい」
「全部!? あ、でも私の貯金額、大したことないかも……」
「バカだな。お金じゃない、朱里自身が欲しいんだ」
さらっと前髪をかき上げられ額にキスが落とされると、真史さんの言っている意味を理解する。彼の唇の熱さとこの後のことを想像して、おもわず頬が熱くなった。
「で、でも私、経験ない……」
恥ずかしさから、声が小さくなってしまう。