偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
「なんですかね、今の?」
市ノ瀬くんが、不思議そうな顔をしている。
「さ、さあ。私にも何が何だか、さっぱりわからない……」
確かに社長が言う通り、休みの日も仕事をしようと思ったよ。思ったけれど、口出して言ったわけじゃないのに、どうしてあの人が私の頭の中のことまでわかるの? しかも頭をポンッって、ちょっと気味が悪いんですけど。
逢坂社長、謎すぎる。
「私の顔に、何か書いてある?」
そんなことあるわけ無いとわかっていて、一応市ノ瀬くんに聞いてみる。
「いや、何も書いてないですけど」
真面目な市ノ瀬くんはさも当たり前にそう答え、スタスタとどこかに行ってしまった。
「……だよね」
ひとり取り残された私はポツリと呟く。社長が消えたドアを見つめると、深いため息を漏らした。