偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
見合い話は突然に
バッグと資料の詰まった紙袋を自分の部屋に置くと、ベッドに座り膝を立てて丸まる。
「今日は疲れたぁ……」
目を閉じながら長い息を吐く。と、まぶたの裏に浮かぶのは、昼間の逢坂社長の顔。
「うわっ!」
慌てて目を開け、それを振り消すように頭をブルブルッと振った。
なんなのよ、もう! なんで家に帰ってまで、社長の顔を思い出すわけ?
そんなこと問わなくてもわかっているのに、そうせずにはいられない。
「少しぐらいニコッとしてくれてもいいのにね」
私の記憶の中にある逢坂社長の顔は全部、仏頂面か眉間にシワが寄った顔ばかり。社長という立場だと、威厳ある態度でいなきゃいけないのもわかるけれど。
「恋人には、優しく微笑んだりするのかなぁ」
逢坂社長の見たこともない、いるかもわからない彼女に、嫉妬してみたりして。
「バカバカしい……」
ベッドにころんと転がり、ため息にも似た息を吐いて天井を仰ぐ。しばらく何も考えず寝転んでいると、ドアの向こうから大きな声が聞こえてきた。