偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~

 お見合いのことは全く知らないけれど、こんな急にするものなの? どうしてこんなことになった?

 弱々しい目でそう訴えるが、父も母も苦笑いするだけで何も答えてくれない。いつまでも頭を下げている愛子さんに困り果て、どうしたものかと頭を抱えた。

 愛子さんには、子供の頃から何かとお世話になっている。病弱で入退院を繰り返していた母の代わりに、よく遊び相手にもなってくれた。子供のいない愛子さんは私のことを我が子のようにかわいがってくれて、いつかは恩返しをしたいと思っていた特別な存在だ。だから愛子さんの頼みなら、なんでも聞いてあげたいところだけれど……。

 “お見合い”とか、内容が内容だけに躊躇してしまう。

「愛子さん、顔を上げて」

 彼女の肩に手を添え体をもち上げると、正座をして向かい合った。

「愛子さん、ごめん。私まだ、誰とも結婚するつもりないから。それに、男性とお付き合いもしたことないし……」



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