偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
だったら会う前にその意志がないと断ったほうが、よっぽど誠実だと思うんだけど。お見合いって、そういうものなの?
ひとり真面目に思考を巡らす。
「いい話じゃないか、朱里。お前も二十五歳になる年頃の娘だ。お見合いのひとつやふたつ経験しておかないと、いつまで経っても彼氏すらできないぞ」
と勝手なことを言って笑っているのは、父の高坂徹。
彼氏すら──とは聞き捨てならない。
「そうよ、朱里。いつになったら、彼氏をうちに連れてきてくれるの?」
そう言いながらワクワクしているのは、母の高坂万里子。
何度も言うが、たしかに私には、生まれてこのかた一度も彼氏がいない。それは紛れもない事実だ。でもだからといって、両親がひとり娘の恋愛に口を挟むのはいかがなものか。
小学校から大学まで女子だけの学校に通っていた私は、男性に免疫がほとんどない。年配の先生方と話はできても、年が近い男性と話すのは至難の業。