偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
その気持ちが膨らむと、ひとつ深呼吸をした。決心がつき、ゆっくり口を開く。
「愛子さん、わかった。お見合いするよ。でも今回だけ、二度目はないからね」
「えぇっ!? 本当に? 朱里ちゃん、ありがとう!」
愛子さんは嬉しそうに顔をほころばせるとガバっと私に抱きつき、何度もありがとうを繰り返す。
「今度、焼き肉おごってくれる?」
「はいはい。そんなこと、お安い御用よ。そうと決まれば、朱里ちゃんの気が変わらないうちに、先方へ連絡しておくわね」
愛子さんはバッグを持って立ち上がると、外で電話を掛けるのか部屋から出ていった。
「なあ朱里。見合いの話、本当によかったのか?」
さっきまで『玉の輿に乗れるぞ』なんて言っていた父が、今度は心配そうな顔をして私の顔を覗き込む。
「お見合いしろって言ったのは、お父さんじゃない」
「いや、見合いをしろとは言ってない」
「何よ、それ!?」
また始まった。父はいつもそう。