偽装結婚ならお断りです!? ~お見合い相手はイジワル社長~
無愛想な彼の意外な一面
「朱里ちゃん。今日のお見合いは形式張ったものじゃないから、肩の力抜いてリラックスリラックス」
愛子さんはそう言って、ニッコリと微笑む。
「う、うん……」
愛子さんの言うことはごもっとも。わからなくもないけれど、肩の力を抜きたくてもこの格好じゃ……。
ゆっくり目線を下げると、自分自身を見つめた。
どうして振袖なのよ──。
がっくり肩を落とし、『七五三じゃあるまいし、二十六にもなって真っ赤な振袖なんてないわ』と心の中で悪態をつく。
いくら愛子さんの見立てでも、こんな豪華な振袖じゃ堅苦しいというか、やる気満々に見えない? 軽い気持ちでいいって言ってたから、お気に入りのベージュのワンピースを用意しておいたのに……。
着慣れない振袖姿じゃ動きにくいし、帯をギュッと絞められていては、この後に用意されている豪勢な料理が思いっきり食べられないじゃない!